ワイナリーレポート

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『コウモリガ』


勝沼栽培課、園田です。

ブドウの収穫が終わった後のブドウ畑は、日々冷たくなっていく空気にその葉を黄色く変化させながら「ほっ」と安堵の一息をつきます。
ブドウの樹はこれまで光合成により生み出される栄養の、その大部分を注ぎ込んでいた重い房が無くなったことで、少し寂しそうにも見えますが、同時にとてもさっぱりとした姿になります。
そしてその軽くなった体に秋の澄んだ光を浴びて、冬越しと来年の芽吹きのためのシーズン最後の光合成をするのです。



天候が比較的安定していたこと、またそのために葉や樹に大きく病気が発生しなかったことから、今年の晩秋のブドウ畑は健全に美しく黄色に染まりました。樹にエネルギーを蓄えた良い状態での冬季剪定と冬越しができるのではないかと思います。

しかし健全に黄色く、と申しましたが、ときどき我々の畑の中には鮮やかに赤く紅葉しているブドウの樹があります。多くの緑色の樹の中で、一本だけ紅葉する場合は、このブドウの樹が弱っているシグナルです。



この写真の場合は、『コウモリガ』という比較的大型の蛾の幼虫がブドウの幹に入り込んで、食害にあっているために起こってしまう現象なのです。ブドウ栽培において気を付けなくてはならない幾種類かの害虫がいます。このコウモリガはその一つで、我々は頭を抱える原因となっています。

コウモリガの幼虫はブドウの樹の生え際から幹の内部に侵入し、その丈夫な歯で幹をかじり掘りながら成長し、やがて幹をぐるりと一周して樹の地上部と地下部の栄養のやり取りを部分的に分断してしまうのです。
この紅い葉の色はブドウの苦しみの訴えなのでしょう。何年も何十年も頑張ってきたブドウの樹が、気が付けば樹が弱って葉が赤く染まり枯れてしまうのです。きれいではありますが、大変に残念でそして悔しい紅葉なのです。

ところでコウモリガという名前はパタパタと夜に飛ぶさまや、葉などにつかまっている様子から付けられているようで、コウモリガの成虫は、夜間に小さな卵を広範囲にばらまきながら飛行するようです。

そしてコウモリガの幼虫の幹への侵入をいち早く察知して、補殺するのは原始的ですがとても有効な樹を守る手段です。他にもなんとかこれ以上悲しい紅葉を見ることの無くなるように、我々は方法を模索しています。

山に囲まれた城の平ヴィンヤードでは、さまざまな鳥獣による被害やこれらの虫による被害と常に隣り合わせです。しかし100年後にもこの畑からお客様に喜んでいただけるワインをお届けするために、これらの害虫からブドウの樹を守っていくことも我々の大事な使命です。

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